作業時間の個人差を動画で縮める方法
スマホで
同じ仕事を任せているのに、あの人は早くて、この人はいつも時間がかかる。現場を見ていて、そう感じたことはありませんか?
結論から言うと、そんなときはまず「やり方の違い」を疑ってください。そして、その差は上から指導して埋めるより、本人に自分の作業を見てもらうほうが早く縮まります。
この記事のポイント
- 同じ作業で約2倍の差が出ても、原因は腕より手順の違いのことが多い
- 「指導の徹底」は、言われたとおりにしか動かない人を生みやすい
- 撮った映像は叱る材料にせず、本人が見直すきっかけとして渡す
人を増やせないなら、今いる人の作業を速くしたい。そう考えている社長は多いと思います。日銀短観(2026年9月調査)では、中小製造業の雇用人員判断DIは−32でした。人が「足りない」と答えた会社が「余っている」を32ポイント上回り、12月の見通しは−37と、さらに足りなくなる見込みです。
作業時間の個人差は、腕より手順の違いで生まれる
ある工場で、同じ工程を担当する2人の作業をビデオで撮り、工程ごとに時間を比べた例があります。結果は、1人が約1時間、もう1人は30分弱。約2倍の差です。
映像を見直すと、差の正体ははっきりしていました。1回に出す糊の量と、塗る範囲が違う。片方は道具の準備を2回に分けている。速い・遅いではなく、手順が違ったんですね。
別の食品工場の袋詰めでも、勤続年数が長い人ほど速いとは限りませんでした。「ベテランだから大丈夫」は、測ってみないと分からないってことです。
スマホで作業を撮って比べる手順
特別な機材は要りません。スマホ1台で、次の順に進めます。
- 同じ工程を担当する2人以上の作業を、同じ位置・同じ角度で撮る。手元と作業台が入るように固定します
- 工程の区切り(準備・作業・片付けなど)を先に決め、区切りごとに時間を測る
- 映像を並べて見て、時間が違う区切りの手順を書き出す
- 本人たちに映像と時間を見せて「どこが違うと思う?」と聞く
- いちばん楽で速い手順を作業手順書に書き、写真か短い動画を添えて全員でそろえる(作業の標準化)
大事なのは4番目です。ここを飛ばして手順書だけを配ると、次で書く「指導の徹底」と同じことになります。
「指導の徹底」が逆効果になりやすい理由
ここで「遅い人に、速い人のやり方を叩き込もう」と思うかもしれません。ぶっちゃけ、これはうまくいかないことが多いんですよ。言われた側は「自分が責められた」と受け取ります。言われたとおりには動いても、自分で工夫はしなくなります。
私がおすすめするのは、2人の映像と時間を本人たちに見せて「どこが違うと思う?」と聞くことです。自分で気づいた手順の違いは、自分で直します。測った数字は、叱る材料にせず、本人が見直すきっかけとして渡してください。
長崎県の湘南サンライズ工業(従業員28人)は、大学などと組んで、熟練者の「かん・こつ」を数値にして見える化し、技術の引き継ぎに取り組んでいます。やり方を目に見える形にするのは、小さな会社でもできる人手不足の対策です。
よくある質問(Q&A)
Q:撮影すると、従業員に嫌がられませんか?
A:嫌がられることはあります。なので、「評価のためではなく、楽なやり方を探すため」と先に伝えてください。最初は社長や現場のリーダーの作業から撮ると、受け入れてもらいやすいです。
Q:測った作業時間を、人事評価に使ってもいいですか?
A:おすすめしません。評価に使うと分かった時点で、次から自然な作業を撮らせてもらえなくなります。数字は手順を見直すためだけに使う、と最初に決めておきましょう。
Q:どの作業から撮ればいいですか?
A:毎日くり返していて、人によって時間がばらつく作業からです。回数が多いほど、手順をそろえたときに浮く時間も大きくなります。
おわりに
スマホ1台あれば、明日からでも始められます。撮った映像のどこを見ればいいか、改善の効果をどうお金に直して示すかで迷ったら、お気軽にご相談ください。
出典
- 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」雇用人員判断DI(中小企業・製造業、2026年9月調査の実績と12月の予測)。日本銀行 時系列統計データ検索サイト
- ミラサポplus 事例ナビ「株式会社湘南サンライズ工業」(中小企業庁、2023年「はばたく中小企業・小規模事業者300社」)