AI活用は今使うソフトから始める
新しいAIを
「AIを入れれば、事務の手間が半分になります」。展示会のブースや営業の電話で、こんな案内を受けたことはありませんか?手元には、導入の費用と毎月の利用料が書かれた見積もり。乗り遅れたくない気持ちと、本当に使いこなせるのかという不安の間で、判断を先送りにしている社長は多いと思います。
AIを使い始めるなら、新しいAIのソフトを買う前に、今毎日使っている会計ソフトやレジに入っているAIの機能を確かめてください。仕事のデータはもうそこにあり、画面にも慣れているので、新しく買うより早く、安く始められます。
この記事のポイント
- 生成AIを使う方針の会社は1年で大きく増えた。ただし中小企業は58.1%で、大企業の74.0%より低い
- 会計ソフトやレジには、仕訳の提案や商品の見分けなど、AIがすでに入っていることが多い
- 新しいツールは、今のソフトで届かない作業が分かってから選ぶ。補助金もその段階で使う
生成AIを使う方針の中小企業は、6割近くまで増えた
総務省の「令和8年版 情報通信白書」によると、2025年度の調査で、生成AIを「積極的に活用すべき」か「範囲を限定して利用すべき」と答えた日本の企業は68.9%でした。前の年の49.7%から大きく増えています。規模別では、大企業が74.0%、中小企業が58.1%です。
正直、この数字を見て「うちも何か入れないと」と焦る必要はありません。使う方針を決めても、どの作業から使うかを決めなければ、仕事の時間は減らないからです。
AIは新しく買うより、今のソフトに入っている
いま、会計ソフトの多くにはAIの機能が入っています。たとえば、マネーフォワード クラウド会計は「AIが適切な勘定科目を提案」し、使うほど精度が上がるとしており、領収書などのファイルを上げるとAIが仕訳を作る機能も備えています。freee会計は、銀行やカードの明細の中身から勘定科目を推測して候補を出します。弥生会計 Nextは2025年に、会話するように入力するとAIが仕訳を作る「AI取引入力」の提供を始めました。
レジも同じです。愛知県でパン店を営むトラムスコープは、カメラでパンを見分けて、種類・個数・値段を自動で計算するレジを入れました。お客さんの待ち時間が短くなり、店員が120種類以上の商品名と値段を覚えなくてよくなったそうです。
今のソフトから始めるほうが早いのは、仕事のデータがもう入っていて、いつもの画面のまま使え、今の契約のまま使えたり追加の料金が小さかったりするからです。
今のソフトで確かめる5つのこと
次の順に確かめると、どこにAIを使えばいいかが見えてきます。
- 毎月いちばん時間がかかっている作業を1つ決める(入力、照合、集計など)
- その作業に使っているソフトの「機能一覧」や「新機能のお知らせ」で、「AI」「自動」「提案」という言葉を探す
- 数字がいつもと違うときに知らせてくれる機能があるか見る。決算のときに気づくより、その月のうちに気づくほうが手を打てる
- 使い始めの1か月は、AIの提案を人が確かめてから登録する。税の区分のように判断が要るものは特に
- 今のソフトで届かない作業が残ったら、そこで初めて新しいツールを探す
新しいツールは「足りないところ」が分かってから選ぶ
それでも、今のソフトでは足りない作業は出てきます。たとえば、部署ごとに別のソフトを使っていて、受注の状況を誰も追えない場合です。こうなると、ソフトどうしをつなぐ仕組みが必要になります。
その段階では、国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)が使えます。令和7年度の補正予算の事業から名前が変わり、AIを含むITツールの導入を支援すると明記されました。2026年7月の衆議院 経済産業委員会では、中小企業庁が「まずは、より多くの中小企業の経営者にAIを試してもらうことが重要」と答え、ChatGPTのような汎用のAIも、定額の契約なら補助の対象にしていると説明しています。補助率や上限額は年度や枠で変わるので、申請の前に事務局の公募要領で確かめてください。
もう1つ、ITの会社に全部を任せきりにしないことです。どの作業を、どう変えたいのかを社内で決めてから相談すると、要らない機能まで買わずに済みます。順番さえ守れば、AIの導入は大きな投資にならないってことですね。
よくある質問(Q&A)
Q:今使っているソフトにAIの機能があるかは、どこで分かりますか?
A:ソフトの会社のホームページの「機能一覧」か、ログインしたあとの「お知らせ」を見てください。分からなければ、サポートの窓口に「AIや自動化の機能はありますか」と聞くのが早いです。
Q:ChatGPTのような生成AIは使わなくていいのですか?
A:使ってかまいません。メールや案内文の下書きには向いています。ただ、毎日の数字のデータは会計ソフトやレジの中にあるので、入力や集計の手間を減らしたいなら、まずはそちらのAIから試してください。
Q:AIが作った仕訳が間違っていたら、どうなりますか?
A:最後に責任を持つのは会社です。使い始めは提案を人が確かめてから登録し、よく出る取引から順に、任せる範囲を広げてください。
おわりに
AIを使うかどうかより、どの作業から使うかを決めるほうが、ずっと大事です。今お使いのソフトで何ができるのか、どの作業から始めるのかを、一緒に確かめます。お気軽にご相談ください。
出典
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」(2025年度の企業向け調査。生成AIの活用方針)
- マネーフォワード「マネーフォワード クラウド会計の機能」(2026年11月閲覧)
- freee「明細勘定科目推測の使い方」(freeeヘルプセンター、2026年11月閲覧)
- クラウド Watch「弥生、「弥生会計 Next」でAIが仕訳を自動生成する新機能のβ版」(2025年6月27日)
- ミラサポplus 事例ナビ「株式会社トラムスコープ」(中小企業庁、2021年「はばたく中小企業・小規模事業者300社」)
- ミラサポplus「デジタル化・AI導入補助金2026」(中小企業庁、2026年3月)
- 第221回国会 衆議院 経済産業委員会 第16号(2026年7月15日)中小企業庁次長の答弁(国会会議録検索システム(国立国会図書館))