提案営業が進まない原因は「評価」にある
提案の件数と
「提案営業ができないのは、営業担当の力が足りないからだ」。そう考えて、研修を増やしたり、トークの台本を配ったりしている会社は少なくありません。
でも、その前に見てほしいものがあります。毎月の評価で、何を数えているかです。数えているのが売上金額だけなら、提案営業はなかなか根づきません。手間のかかる提案より、いつもの注文を確実に取るほうが得な仕組みになっているからです。
この記事のポイント
- 提案営業が根づかない原因は、営業担当の腕より「何を数えるか」にあることが多い
- 売上金額だけの評価だと、提案の準備はすぐ数字にならず「損な動き」になる
- 行動を数える物差しを1つ足すだけで、提案した人が報われる形に変わる
売上金額だけの評価と、行動も見る評価で何が変わるか
ある卸売業の例です。ルート営業が中心で、売上が少しずつ減ってきたため、社長は提案型の営業に切り替えたいと考えていました。ところが、評価はほぼ売上金額だけで決まっていました。
この物差しで見ると、大口の取引先を持つベテランは、いつもの注文を受けるだけで数字が出ます。担当先が小さい若手は、どれだけ動いても届きません。提案は準備に手間がかかるうえ、すぐには売上になりません。
要は、社員が怠けているのではなく、今の物差しのもとでいちばん合理的に動いているだけなんですね。号令だけで変わらないのは、そのためです。
卸売業の景気は今は良いが、先行きは慎重
「今は売れているから、変えるのは後でいい」と思うかもしれません。日銀短観(2026年9月調査)では、中小企業の卸売業の業況判断DIは+10で、2025年3月の+11に次ぐ高さでした。ただ、12月の見通しは−3と、0の下に沈む見込みです。
現場の声も分かれています。内閣府の景気ウォッチャー調査(2026年9月)では、近畿の機械器具卸の経営者が、値上げが続いて「その作業に追われて通常の営業ができていない」と答えています。一方、北海道の鋼材卸からは、人手不足対策で設備を入れ替える動きが強まっている、という声もありました。お客様の側も対応に追われている今は、困りごとを聞きに行く余地が大きい時期でもあります。
自社の評価を見直す5つの問い
立派な人事制度を一から作る必要はありません。まずは次の5つに「はい」と言えるかを確かめてください。
- 社長は「なぜ提案営業に変えるのか」を、売上の推移を見せながら自分の言葉で話したか
- 今のお客様を守る役割と、新しく提案する役割とで、目標を分けているか
- 提案の件数や、聞き取った困りごとの件数など、行動の目標が1つでも入っているか
- 担当先の大きさがまるで違う人どうしを、同じ金額の物差しで比べていないか
- 若手に同行して教えたことが、評価のどこかに入っているか
2つ以上「いいえ」なら、評価のほうが提案営業の足を引っぱっている可能性が高いです。とくに1つ目が抜けると、評価だけ変わって「何のために?」となり、かえって反発を招きます。北海道の家具メーカー、コサインも、経営計画が従業員まで十分に伝わらず、個人の目標があいまいなことに悩んでいました。そこで、経営の目標を組織や個人の行動目標にまで細かく分け、管理する仕組みづくりに取り組んでいます。
成果だけの評価に振り切ると、ノウハウが残らない
逆に「成果を出した人に思い切り報いればいい」と振り切るのも危ういです。成果だけで評価すると、うまくいくやり方を一人で抱え込む人が増えがちです。教えた人ほど損をしやすいからです。提案営業は、うまくいった型を社内で回してこそ広がります。
正直、行動の目標も万能ではありません。件数だけを追うと、中身の薄い提案が増えやすくなります。3か月に1回くらいを目安に、提案の中身を上司と一緒に見直して、物差しのほうも合わせて直していきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q:評価を変えると、ベテランが不満を持って辞めてしまいませんか?
A:いきなり給料を下げる必要はありません。今のお客様を守る役割の評価は残し、提案や若手への同行を加点にすれば、ベテランにも新しい役割ができます。
Q:提案の件数を目標にすると、数だけ稼ぐ人が出ませんか?
A:出やすくなります。なので、件数は入口の目標と割り切り、3か月ごとを目安に、提案の中身を上司と一緒に見直してください。
Q:社員10人ほどの会社でも、評価制度を作り直す必要がありますか?
A:作り直さなくて大丈夫です。まずは営業会議で見る数字に「提案件数」を1つ足すところからで十分です。
おわりに
営業が変わらないとき、人より先に物差しを疑ってみてください。上の5つの問いで引っかかった所から、どこを足せばいいか、ベテランにどう伝えるかを一緒に考えます。お気軽にご相談ください。
出典
- 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」業況判断DI(中小企業・卸売、2025年3月〜2026年9月調査の実績と12月の予測)。日本銀行 時系列統計データ検索サイト
- 内閣府「景気ウォッチャー調査」景気判断理由集(2026年9月調査、近畿・機械器具卸、北海道・鋼材卸売)
- ミラサポplus 事例ナビ「株式会社コサイン」(中小企業庁、2024年「人材活用事例集」)