事業再生

売上は伸びたのに利益が減る原因の探し方

「なぜ?」を事実でつないで、手を打つ場所を1つに絞る

工場の事務所で、付箋を矢印でつないだ「なぜ」の図をホワイトボードに貼っている様子。窓の向こうに工場の現場

「忙しいのに、なぜか儲からない」。こうこぼす製造業の社長が増えています。受注はあり、売上も前の年より伸びている。それなのに、決算を見ると利益が減っている。

こういうとき、すぐに値上げや人を増やす手を打ちたくなります。でも、原因を確かめずに打った手は外れがちです。まずは「なぜ?」を事実でつないで掘り、手を打つ場所を1つに絞りましょう。

この記事のポイント

  • 売上が伸びても、仕入れ値の上がり方に売値が追いつかないと、利益は減る
  • 原因は「なぜ?」を事実でつないで掘る。最初の分け方で、たどり着く答えが変わる
  • 推測は事実と分けて書き、記録や数字で確かめてから手を打つ

中小製造業で利益が減りやすいのは、売値が仕入れ値に追いつかないから

今の中小製造業は、景気そのものは悪くありません。日銀短観(2026年9月調査)で、中小企業・製造業の業況判断DIは+14と、2024年以降でいちばん高い水準です。

ところが、値段の動きは違います。仕入れ値が「上がった」会社の割合から「下がった」会社の割合を引いた仕入価格DIは71。同じように売値を見た販売価格DIは41。売値の上がり方が、仕入れ値に30ポイントも追いついていません。

中小企業・製造業の仕入価格DIと販売価格DIの折れ線グラフ。2024年3月から2本とも同じように動き、2026年9月は仕入れ値が71、売値が41で、差は30
日銀短観 仕入価格DIと販売価格DI(中小企業・製造業)。どちらも「上がった」の割合から「下がった」の割合を引いた値

現場の声も同じです。内閣府の景気ウォッチャー調査(2026年9月)では、南関東の金融機関の担当者が、地元の製造業は単価が上がった分だけ売上が増えたが、価格転嫁が追い付かず利益率が悪くなった会社が多い、と答えています。

ただ、それが自社の根っこかどうかは、掘ってみないと分かりません。

この記事の内容を、約7分の動画でも解説しています。

利益が減った原因は、「なぜ?」を事実でつなぐと見えてくる

ある自動車部品メーカーの例で考えてみます。営業は社長と専務の2人で、知り合いからの紹介が中心。売上の大半は大手3社です。前の期より利益率が下がり、クレームは最近、納期遅れが増えています。社長は現場の出身で、忙しいときは自分も現場に入ります。分かっている事実はこれだけです。

「なぜ?」でつなぐと、こんな筋が考えられます。

利益が減った原因を「なぜ?」でたどった図。利益が減った、納期遅れが増えた、大手頼みで手一杯、新しい取引先を増やせない、社長の営業の時間が減る、社長が現場の応援に入る、検査の手間が増えた、の順にさかのぼり、最後の「検査の手間が増えた」が手を打つ所
利益が減った原因を「なぜ?」でたどった例。いちばん下の赤い箱が、手を打つ根っこ

品質の要求が上がって検査の手間が増え、納期を守るために社長が現場に入る。そのぶん営業が止まり、大手の仕事をさばくだけで手一杯になって、納期遅れと利益の減少につながる。社長が現場を助けるほど、会社の利益は細っていくってわけですね。

この筋なら、最初の手は値上げの交渉でも人を増やすことでもなく、検査を任せられる人を育てるなど、社長の時間を営業に戻すことです。

尚、この筋はまだ仮説です。日報や作業の記録で確かめてから手を打ちます。

「なぜ?」で原因を掘る4つの決まり

紙1枚あれば、社長1人でも始められます。外さないでほしい決まりは次の4つです。

  1. 問題を数字で1つに絞る。「利益が減った」ではなく「粗利率が前の期より4ポイント下がった」のように書く
  2. 最初の分け方を決める。「売値・量・原価」「製品別・取引先別」など、1段目の分け方で、たどり着く答えが大きく変わる
  3. 事実と推測を分けて書く。推測には印を付け、あとで記録や数字で確かめる
  4. いちばん根っこの原因を1つ選び、そこに手を打つ

2つ目の分け方は、とくに大事です。和歌山県で特殊な印刷物を作るプリントテクニカは、2016年度に売上が増えたのに赤字になりました。製品別に調べると、売れ筋だった携帯電話向けのフィルムが、外注の比率が高いうえに売値も下がり、採算を悪くしていました。

同社はその後、製品ごとのコストを社員にも見えるようにして利益率重視に切り替え、2018年度以降は黒字です。全体の数字だけを眺めていたら、この製品は見つからなかったはずです。

売上が伸びているうちに掘るほうが、打てる手は多い

「売上が伸びているうちは大丈夫」と思うかもしれません。でも、ぶっちゃけ原因探しがいちばん効くのは赤字になる前なんです。手元のお金に余裕があるうちなら、人を育てる、やり方を変えるといった時間のかかる手も打てます。

外の力を借りるなら、国の「早期経営改善計画策定支援」があります。専門家と一緒に資金繰りや採算の計画を作る費用の3分の2を国が負担し、国が持つ額は計画づくりで15万円までです。作った計画は、取引のある金融機関とも共有します。

よくある質問(Q&A)

Q:売上が伸びているのに利益が減るのは、値上げが足りないからですか?
A:それだけとは限りません。売れる製品の組み合わせの変化や、外注・残業の増加など、原因は会社ごとに違います。まず製品別か取引先別に粗利を並べて確かめてください。

Q:「なぜ?」の掘り下げは、社長1人でやってもいいですか?
A:1人でも始められますが、現場の人と一緒にやるほうが確かです。手直しの回数や待ち時間など、社長の知らない事実が出てくるからです。

Q:原因を調べる時間がないときは、何から見ればいいですか?
A:製品別か取引先別に、売上と粗利を前の年と並べた表を1枚作るところからで十分です。下がり幅の大きい所が、掘り始める場所になります。

おわりに

効く手は、原因のある場所にしか打てません。粗利の表を作ってみて、どこから掘ればいいか迷ったら、一緒に考えます。お気軽にご相談ください。

出典

  • 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」業況判断DI・仕入価格判断DI・販売価格判断DI(中小企業・製造業、2024年3月〜2026年9月調査)。日本銀行 時系列統計データ検索サイト
  • 内閣府「景気ウォッチャー調査」景気判断理由集(2026年9月調査、南関東・金融業)
  • ミラサポplus 事例ナビ「株式会社プリントテクニカ」(中小企業庁、2020年版中小企業白書)
  • J-Net21「早期経営改善計画策定支援」(中小企業基盤整備機構、2026年1月改訂)